▽アジアに蔓延した違法コピー・海賊版の時代
1990年代以前の台湾では、日本の漫画、アニメ、ゲームが非常に人気を集める一方で、海賊版、コピー商品、非正規流通もかなり多かったと言われています。
漫画であれば、日本の人気作品が無断で翻訳・出版されることがありました。
ゲームであれば、ファミコン互換機や、複数のゲームが入ったカセットなどが市場に出回る無法地帯状態だったそうです。
当時は著作権に対する意識や取り締まり※が現在ほど整っておらず、
日本のコンテンツが台湾やアジア圏に広がる入り口として、こうした非正規流通が大きな役割を果たしていたのも事実だと思います。
※台湾では1992年に著作権法が大幅に改正
特にアーケードゲームの世界では、この海賊版文化がとんでもない形で本家メーカーに影響を与えることになります。
その代表例が、カプコンの大ヒット格闘ゲーム『ストリートファイターII』です。
1991年に登場した『ストリートファイターII』は、世界中で大ヒットしました。
対戦格闘ゲームというジャンルを一気に広めた、まさにゲーム史に残る作品です。
しかし、当時のアジア市場では正規のアーケード基板だけでなくコピー基板、つまり海賊版の基板が大量に出回っていたそうです。
元カプコンのゲームプロデューサーで、『ストII』シリーズにも深く関わった岡本吉起氏は、自身のYouTubeチャンネルなどで、当時のアジア市場について語っています。
岡本氏によると、台湾、香港、中国、韓国などでは、カプコンの正規基板をコピーした海賊版が大量に流通しており、現地のゲームセンターに行くと、並んでいる『ストII』が見渡す限りコピー基板だったというような、まさに無法地帯のような状況だったそうです。
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参考:岡本吉起 ゲームch「【違法コピー!】激ヤバ海賊版ストIIレインボーについて思うこと」
https://www.youtube.com/watch?v=SLDhR3E87Jw
参考:岡本吉起 ゲームch「海賊版の流通は是か非か」
https://www.youtube.com/watch?v=unelsUI8H8E
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ゲームが遊ばれているのに、正規の売上が入ってこない。
しかも海賊版が出回れば、品質管理もブランド管理もできません。
現在であれば法的措置や国際的な取り締まりも考えられますが、当時のアジア市場では、そう簡単にはコントロールできなかったと岡本氏は語ります。
ところが、この海賊版文化は、皮肉なことに海賊版の中から、本家カプコンにまで影響を与える“怪作”が生まれてしまったのです。
その代表例が、『ストリートファイターII レインボー』です。
これは『ストリートファイターIIダッシュ』を勝手に改造した海賊版で、台湾系のハッカーグループまたは業者が作ったものとされています。
その内容はかなりメチャクチャでした。
・空中で波動拳が撃てる
・飛び道具が連発できる
・飛び道具が相手を追尾する
・対戦中にキャラクターを変更できる
・ゲームスピードが異常に速い
・通常ではあり得ない動きや技が出せる
本来の『ストII』は、キャラクターごとの間合い、駆け引き、技の硬直、読み合いが重要なゲームです。
しかし『レインボー』は、そういったバランスを完全に破壊した、いわば“なんでもあり”の改造版でした。
普通に考えれば、ゲームバランスは崩壊しています。
しかし、これがなぜかプレイヤーにはウケてしまいました。
ゲームスピードが速く、展開が派手で、見た目にも分かりやすい。
ある意味では、本家よりも刺激が強かったのです。
しかもこの『レインボー』はアジア圏だけでなく、日本のゲームセンターにも逆輸入され、かなり話題になったと言われています。
本来であれば海賊版は違法で、認められるものではありません。
ただ、ここで面白いのは、カプコン側がこの海賊版を単に「許せないもの」として見るだけではなく、その中にあった“ユーザーが求めている面白さ”を見抜いたことです。